基本再生産数 R0により感染者数の推移がどのように変化するのかをモデルを使って計算しグラフ表示します。 R0の値は上で1から5の間で変えることができます。 計算はSIRモデルまたはSEIRモデルを選択できます。 縦軸は線形または対数(Log)表示が可能です。 また、一番最後に描かれたグラフの最終罹患率等のデータが上の”計算結果”に表示されます。 500日以内に終息しない場合には500日目の罹患率を表示します。
人口1千万人、0日目に一人の感染者が出現したとし、 感染者が感染してから他人を感染させることができるまでの期間を4日(1/ε、SEIRモデルのみ)、 感染者が他人を感染させることができる期間(感染性期間)を9日(1/γ)と仮定しています。 (これらはそれぞれ潜伏期間、発症期間と似ていますが厳密には同じではないようです。) 人口一億の場合は0日目の感染者を10人と考え、 人口10万人の時には感染者数が0.001%になる日を0日目と読みかえるなどしてください。
SIRモデル(またはケルマック‐マッケンドリックモデル)について簡単に説明します。t日目の市中感染者数をI(t)、未感染者数をS(t)、
市中から除かれた隔離感染者と元感染者(回復、死亡)の和をR(t)とおきます。
系の人口Nは外部との出入りがないとすれば一定で、
N = I(t) + S(t) + R(t)
とあらわされます。
話を簡単にするためここでN=1とおくと I(t)、S(t) 、R(t)
は系の人口に対するそれぞれの割合を示すことになります。
ここで市中感染者が一日あたり他者を感染させる率(つまり一人の感染者が一日に感染させる人数)をβとします。
また市中感染者のうち一日に隔離、回復、死亡などして市中から除かれる
(他者を感染させる恐れのない状態になる)率をγとします。
すると I(t)、S(t) 、R(t)の一日当たりの増減は
下の図のようになります。
SEIRモデルでは感染者が二種類に分けられます。 感染したけれども他人を感染させる能力をもたない状態(Exposed、潜伏期間より少し短いといわれています)と 感染させる能力をもつ状態(Infectious)です。 これらのあいだの移行率をε、 前者の人数をE(t)と新たにおきます。 E(t)からI(t)への一日当たりの移動人数はεE(t)となり 上の図はS(t) → E(t) → I(t) → R(t)に変わります。
基本再生産数(R0)とはだれも感染者のいない系に一人の感染者をおいたときに生ずる二次感染者の数です。
R0が1より大きいといわゆる鼠算的に感染者が増加します。
この最初の感染者は一日当たりβS(0)=βN = β人に感染させます。
上のγは感染者の一日当たりの排除率ですが
その逆数は一人の感染者が他者を感染させる恐れのない状態になるまでの日数(感染性期間)です。
つまりβとγの逆数の積は感染性期間の間に生まれた二次感染者の数:基本再生産数(R0)になります。
R0 = β/γ
上で述べたようにグラフはβとγの2変数と初期値で決まりますが
βの代わりにこのR0を使ったほうが理解しやすいのでそうしています。
このモデルは数個のパラメーターのみで決定される非常に単純化されたものなので 感染拡大の推移を正確に予測すことはできません。 例えば世の中には毎日何十人何百人と接する機会のある人がいる一方、仙人のように何か月も人と接することのない人もいます。 平均すれば同じR0でも仙人が20%もいれば最終罹患率は最大でも80%を超えられません。 また感染が拡大しているのに何の対策もしないなんてこともありえないでしょう。 平均的で個性がなくよく動き回る集団、例えば何千頭も放し飼いしている牧場とか(?) であればモデルがよく合うのかもしれません。
一方、定性的な振る舞いを知ることは今後の対策を考える上で意味のあるものだと思います。 以下に上のグラフを操作してみてわかったことを列挙してみます。
SIRモデルでは基本再生産数(R0)と最終罹患率(p)の関係を
微分方程式を使って解析的に導くことができます。
R0とpは
1-p=exp(-pR0)
のような関係式であらわされます。
この図を右に示します。
R0が1.5でも60%、2を超えると80%以上とほとんどが罹患してしまうことが分かります。
このまま何も対策をしない場合(R0が2.5)、最悪死者が42万人になるという発表がありました。 このモデルでR0が2.5の場合、最終罹患率は90%になりますから、死亡率を2%として 180万人の方が亡くなるという計算になります。 42万というのは大袈裟とは言えないのかもしれません。